紙を綴じるのに便利な文具、ホッチキス。
誰もが知っている文具ですが、その仕組みはご存じですか?
何となくは分かっていても、説明してみてと言われたら困ってしまうかもしれません。
この記事では、意外と知られていない、ホッチキスの仕組みを詳しく解説いたします。
また、フラットクリンチという綴じ方や、針を使わないホッチキスもご紹介いたします。
この記事を読めば、普段何気なく使っているホッチキスの仕組みが分かるでしょう。
ホッチキスの仕組み
ホッチキスの仕組みについて、コの字型の針が折り曲げられて、紙を綴じるというのはなんとなく理解している方が多いでしょう。
では、具体的に、どのようにしてコの字型の針が紙を綴じるのでしょうか。
ここでは、MAXのホッチキスを例にして、ホッチキスの仕組みを解説いたします。
MAXは、日本で初めてハンディタイプのホッチキスを開発した会社です。
では早速、ホッチキスの仕組みを見ていきましょう。
ホッチキスが紙を綴じるのには、次の4つの工程があります。
- マガジンに装てんされた針が、バネの力によって前方に押し出される
- 先頭の針がドライバによって紙に打ち込まれる
- 紙を通過した針はクリンチャに当たり、クリンチャの溝に沿って曲げられる
- 曲げられた針が紙に触れる
以上が、ホッチキスの仕組みです。
コの字型の針が折り曲げられる工程で、重要な役割を担っているのが、クリンチャという部品です。
クリンチャの溝は、針が内側に曲がりやすいように曲面になっています。
さらに、焼き入れを施して表面の金属を硬くし、キズや摩耗を防いでいます。
この加工のおかげで、スムーズな綴じ心地が持続するのです。
「がちゃっ」という一瞬に、こんな複雑な工程と工夫が隠されていたのですね。
フラットクリンチの仕組み
フラットクランチとは、綴じ裏に出ている針が平らになる綴じ方のことです。
[「フラット」=平ら+「クリンチ」=打ち曲げる]という名前の通りです。
普通のクランチの場合、綴じた針の裏側はめがね状で、針と紙の間に隙間があります。
一方、フラットクリンチは綴じ裏が平らなので、綴じた部分のかさ張りを抑えることができます。
では早速、フラットクリンチの仕組みを解説いたします。
通常のクランチとどこが違うのか考えながら見てみてください。
フラットクリンチの工程は次の通りです。
- マガジンに装填された針が、バネの力によって前方に押し出される
- 先頭の針がドライバによって紙に打ち込まれる
- 紙を通過した針は、クリンチャガイドに沿って最後まで打ち込まれる
- 最後まで打ち込まれた針は、クリンチャの溝に沿って曲げられ押し上げられる
いかがでしたか?
先ほど解説した、ホッチキスの仕組みと似ていますが、注目すべきは「クリンチャガイド」と、針が曲げられるタイミングです。
通常のクリンチの場合、針の打ち込みと曲げを同時に行います。
一方、フラットクリンチの場合、針を打ち込んでからクリンチします。
そのため、根元から折り曲げることが可能になり、綴じ裏が平らになるのです。
フラットクリンチは、MAXが開発した世界初の技術です。
「重ねた書類がかさばるので、ホッチキスの裏をかなづちで潰している」というお客様の声を受けて開発されました。
フラットクリンチで綴じられた書類は見た目もスマートで、積んでも書類の雪崩が起きません。
そしてなんと、通常のクリンチで綴じた場合の75%のスペースで収納できます。
お客様に寄り添ったことで誕生した、素晴らしい技術ですね。
針なしホッチキスの仕組み
ホッチキスには、針を使わないものもあります。
針を使わずに綴じる方法は次の2つです。
- 圧着して綴じるタイプ
- 折り込んで綴じるタイプ
今回は後者のタイプの仕組みを、コクヨの「ハリナックスコンパクトα」を例にして解説いたします。
ハリナックスコンパクトαは、手のひらサイズのハンディタイプで、軽い力でコピー用紙5枚まで綴じることができます。
針なしホッチキスが紙を綴じる工程は次の通りです。
1.穴あけパンチの要領で、2か所に切れ込みを入れる(AとB)
A:矢印型の切れ込み
B:Aを差し込むための切れ込み
2.下から上がってくる刃によって切り込まれたAはそのまま押し上げられ、Bの切れ込みに差し込まれる
矢印型の切れ込みは、コクヨ独自のもので、先端部分が引っかかり抜けにくくなっています。
また、ハリナックスコンパクトαには、「とじ穴位置確認窓」が付いているのも特徴です。
綴じ損じを防いだり、紙くずを取り出すためのものです。
もともとは、針なしホッチキスの仕組みを見てみたいというお客様の声がヒントになっています。
ハリナックスコンパクトαを使うときには、ぜひ、この窓から、針を使わずに綴じる様子を観察してみてください。面白いですよ!
針なしホッチキスは、綴じることのできる枚数は少ないものの、針を使わないので様々なメリットがあります。
例えば、異物混入や、誤飲怪我の心配がないため、食品を扱う場所や、幼児・高齢者の施設でも安心して使えます。
また、シュレッダーにそのままかけることもできるので作業時間の短縮にもつながります。
針なしホッチキスは、人と環境に優しいホッチキスと言えるでしょう。
ホッチキスの仕組みまとめ
今回は、ホッチキスの仕組みについて解説いたしました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この記事で紹介した内容は次のとおりです。
- 基本的なホッチキスの仕組み
- フラットクリンチの仕組み
- 針なしホッチキスの仕組み
もうホッチキスの仕組みはばっちりですね!
ちなみに、バネの力によって針が前方に押し出される仕組みは、マシンガンの弾送りにヒントを得ているそうです。
確かに、狙った書類を一発で確実に綴じるホッチキスは、文具界のマシンガンと言えるかもしれません。